「すまない。本当は最初から気がついていた。君たちは女の子だろう? それでも城を守りたいと志願してくれた気持ちが嬉しかった。今さら断るつもりはない。他の者にも言わない。だから……もし良ければ本当の名前を教えてくれないだろうか?」

「…………!」
両手で口を覆ってエミリアは絶句した。

まさか気づかれているとは思わなかった。
ましてわかっていて、敢えて黙っていてくれたなんて。

「勇敢なお嬢さん。どうぞお名前を」
ランドルフはまるでお姫様にするかのように、エミリアに向かって恭しく頭を下げた。

その優雅な姿をぼうっと見つめるばかりのエミリアは、アウレディオに肘でつつかれて、
慌てて我に返った。

「エミリアです……」
夢見心地のまま呟いた途端、ランドルフに片手を取られ、その甲に挨拶の口づけを落とされる。

見惚れるほどに優美な仕草に、
「誰がどう見たって、立派な騎士だろう……」
「そうよね」
珍しく同意するフィオナとアウレディオの声も、エミリアの耳には入ってこなかった。

ただ自分の目の前で微笑むランドルフのことしか、目に入らなかった。