遠慮するランドルフを無理矢理に引きこんで、お昼の弁当を広げたエミリアたちは、そのまま休憩の時間をランドルフと共に過ごした。

城の話や、王族方の警護の話。
騎士団の話に話題が及んで、ランドルフの横顔には、かすかに憂いの色が加わった。

ウェラード家は、リンデンの街では知らない者はない、高名な騎士の家系。
ランドルフの父も、祖父も、まだ現役の騎士としてこの城と王家に仕えている。

「じゃあランドルフ様は、騎士になられてもう五年になるんですね」
「十四歳で叙任されたわけだから、そうなるかな?」
「十四歳。俺達より年下か……凄いな」

高い空を見上げて呟いたアウレディオに、ランドルフは灰青色の瞳を向けた。
「凄くなどないさ、私など。ただ順当に、決められた人生を歩んでいるだけだ」

どこか投げやりな雰囲気を感じさせる言い方に、エミリアは、
(なんだかランドルフ様らしくない……)
と感じた。
咄嗟に問いかける。

「ランドルフ様……ひょっとして騎士になりたくなかったんですか?」

「いや。まさか……」
即答するランドルフは、すかさず首を横に振り、顔にはかすかに笑みさえ浮かべている。
だが、その表情はどことなく寂しげだった。