(こんな顔をみんなに見せたら、今以上に大騒ぎになっちゃうよね……)

笑いながらそんなことを思って、すっかりエミリアの心は晴れた。
うじうじといつまでも一人で悩んでいるのはしょうにあわないので、ここは思いきって本人に尋ねてみることにする。

「ねえディオ。前に、私が作るお菓子、男の子にはあげるなって言ったでしょ。あれってなんで?」

それはどうやらアウレディオが予想していた質問とは、まったく違っていたらしい。

「それがいったいなんの関係が……?」
呆れたように呟く。

昼間からずっと悩んでいた自分を真っ向から否定されたような気がして、自然とエミリアの口調は強くなった。
「いいから! ねぇどうして?」

強気で詰め寄られて、アウレディオは眉間に皺を寄せ、首を捻り始めた。
「うーん」

(悩んでいる顔も良いわーって、マチルダたちだったらきっと喜ぶんだろうな……)
心の中で同僚たちに詫びるエミリアに向かい、アウレディオはようやく口を開いた。

「たぶん……」
「たぶん……何?」

待ち切れずに聞き返したエミリアに、アウレディオが返した答えは――。

「男に食べさせたら、俺の食べるぶんが減るから……かな?」
「なんなのそれ!」

あまりのことに、エミリアは頭を抱えた。
肩の力が抜け、反動でドッと疲れた気がする。

(フィオナが余計なこと言うから、変な心配しちゃったじゃない!)
内心怒りを覚えながら、ふと首を捻った。

(心配……? 私、いったい何を心配してたの? ディオがフィオナと同じように私のお菓子のことを考えてたとしたら、そしたら……?)

そして一つの結論にたどり着いた。

(そうよ! ランドルフ様にわざとお菓子を勧めたんじゃないかって思ったのよ!)

自分の導き出した答えに、自分自身で拍手しながら、この際、その点もハッキリさせておくことにした。