三人は、それから手を繋いで家へ帰った。

にこにこと満面の笑顔の母と苦笑いのアウレディオ。
そして憮然としたままのエミリア。

母が腕をふるった豪華な食事が冷めてしまわないうちには、仕事部屋にこもっている父も、きっと食堂に下りてくるだろう。
そうしたらみんな揃って、いつもの賑やかな晩餐が始まる。

それはエミリアにとっては、何よりも嬉しいことだった。

楽しい晩餐を不機嫌な顔でだいなしにしてしまうのは惜しいので、たまりにたまった不満はぐっと我慢して、ここは母にも笑ってみせることにする。
いつまでも少女のような母と対するためには、ここは自分が大人になるしかない。

「ほんっとに切り替えの早いやつ」
アウレディオの小さな呟きは、幸いなことにエミリアの耳には届かなかった。

けれど、悪態をつきながらもそんなエミリアを見つめるアウレディオの瞳が、どんな時でも優しく輝いていることが、母には嬉しかった。

(この二人ならきっと大丈夫……)

思いをこめて彼女はふふふと笑った。
両手を口に当てて、黄金色の髪をふわふわと揺らす。

――その姿は、やっぱり天使そのものだった。