淡い金色の髪は乱れ、白い頬にも腕にも、ひどい傷がある。
蒼白にも見えるほどの真剣な顔で、真っ直ぐにアルフレッドににじり寄りながら、彼は固く引き結んでいた口を開く。

「アルフレッド……悪い。やっぱりエミリアだけは、あんたにも渡せない!」

気がついた時には、エミリアの体は勝手に動き出していた。
寝台を滑り降り、まっしぐらにアウレディオに走り寄る。

「ディオ! ディオ! ディオ……!」
待ち構えていた腕にしっかりと抱きしめられて、そこで初めて、エミリアは自分が震えていたことに気がついた。

アウレディオの肩口に額を押し当てて、涙の止まらないエミリアに視線を向け、アルフレッドはポツリと呟いた。
「わかってるよ、そんなこと。十年以上前からずっと」

はああっと大きなため息を吐いて、決まり悪そうにポリポリと頭を掻き始めたアルフレッドの様子に、なんだか違和感を覚えて、エミリアはアウレディオの腕の中、涙を拭き拭きふり返った。

「まったく損な役回りだよな……ごめんなエミリア。びっくりしただろ?」

たった今失恋したわりにはあまりにもあっけらかんとした声で、アルフレッドはエミリアに向かって両手をあわせる。

その様子にエミリアは首を捻った。
(…………?)

次の瞬間、アウレディオは目を剥いて、エミリアの体を自分の体から引き離した。
「まさか、ひっかけたのか!」

「「その通り」」
アルフレッドと同時に答えを返し、アウレディオが破壊した扉の向こうから姿を現したのはフィオナだった。