「アル……私……」
それがアルフレッドを傷つける結果になろうとも、そのことで自分自身も傷つこうとも、エミリアは心を強く持って、真実を告げようとした。

しかしそうはさせまいとするアルフレッドの顔が、エミリアの顔にどんどん近づいてくる。
自分の唇で、エミリアの言葉を塞ごうとしているアルフレッドの決意が、エミリアにも伝わった。

「ま、待ってアル!」

(これでもしアルがミカエルだったら、元の姿に戻っちゃう! そしたら違う世界に行っちゃって、もう二度と会えなくって、そんなのって……!)

頭の中を渦巻くさまざまな思い。
でもそれよりも何よりも、涙が出そうな思いで、たった一人の顔が胸に浮かぶ。

(このままじゃアルにキスされちゃう……そんなの嫌!)
エミリアは心の叫びを、最後の部分だけ感情に任せて実際に口にした。

「ディオ!」
言った本人が一番驚いた。

ピタリと動きを止めたアルフレッドも息を呑んでいる。

(馬鹿だ! 私本当に馬鹿だ! こんなことにならないとわからないなんて……今さら遅いよ!)

エミリアが両手で顔を覆った瞬間、医務室の扉を蹴破るようにして、本当にアウレディオが飛びこんできた。