二人のやり取りをいつも黙って見守ってくれていた父が、、母を二階の寝室に連れていった。

「もう眠るように言ってきたから……」
エミリアを安心させるかのようににっこりと笑い、それから彼女の長い話に延々とつきあってくれた。

(こんなふうにいつでもお父さんと二人で乗り越えてきたな……だからこそお父さんを幸せにしてあげたかったのに……今度こそお母さんとずっと一緒にいさせてあげたかったのに……!)

エミリアの思いと父の思いは、同じだ。
だから今回ばかりは、いくら話しあっても平行線で、決して合意できそうにはない。

「お父さんは、お母さんと出会ってエミリアが生まれて、もう一生分の幸せを貰ったと思ってる。そしてそれは、この先たとえお母さんと離れてしまっても、ずっと変わらないって信じてる。だからエミリアは私たちのためなんかじゃなく、自分のしたいようにすればいいんだよ」

優しい父の声に、エミリアは黙ったまま首を横に振り続けることしかできなかった。

(それはだめだよ。絶対にだめだ。でも大好きな人を失うなんて……私にはそれも絶対に無理……!)

考えても考えても、答えの出ない長い夜だった。