「遅くなるんなら、一言そう言ってくれ」
その言葉で、アウレディオがアルフレッドを心配していたんだということがわかった。

「お前もだ。リリーナが心配して、さっきからあちこち捜しまくってるぞ」
いつもよりかなり帰宅時間が遅くなってしまったことに今ごろ気がついて、エミリアはハッとした。

「まあ、二人一緒だったんならいいけどな」
小さくため息を吐いて自分の家に帰ろうとするアウレディオに、

エミリアは急いで、
「ごめん」
と呼びかけた。

アウレディオは面倒そうに視線だけふり向いて、
「俺じゃなくてリリーナに謝れ」
と手を振った。

それでもエミリアはなぜか、
「ごめん」
とくり返さずにはいられなかった。

アウレディオは仕方なしに体ごとふり返って、
「わかったから」
と大きく頷き、家の中へと引っこむ。

その一瞬のアウレディオの顔が、エミリアはいつまでも忘れられなかった。

(私、何がしたいんだろう? ディオに何が言いたいんだろう?)
心の中で自問自答しているところに、アルフレッドが悪戯含みの声で呟く。

「お目つけ役に怒られちゃったな……」
ちょっと茶化したような言い方がアルフレッドらしくって、エミリアは笑いながら彼の顔を見上げた。
その途端、アルフレッドの紫色の綺麗な瞳が、ググッと近づいてくる。

エミリアは思わず反射的に目を閉じた。
(えええっ、もしかして!)