そんな様子を横目に見ながら、
「はい。それなら私も手伝うわ」
フィオナもさっと手を上げる。

「はっきり言って王子のオーラは見えないし、どうやら王子の周りにいる人たちもあまり良い色の人はいないみたいだけど、だからこそそんなところにエミリアを一人で行かせるわけにはいかないもの」

横目でちらりと見たところからすると、最後のほうはどうやらアウレディオに対するあてつけのようだった。

フェルナンド王子は、花が綻ぶかのように優雅に微笑んで、アウレディオに向き直った。
「お姫様方はこう仰っているけど……騎士君はどうする?」

アウレディオは悔しそうに唇を引き結びながらも、
「わかりました。俺もやらせていただきます」
と答えた。

しかしその蒼い瞳には、獲物を見つけた獣のようにギラギラとした激しい光が宿っている。
「その代わりお願いがあります。任務が終わったらその最後に、俺たちの願いを一つ聞いて下さい」

(それってもしかして……)
息を呑むエミリアに、アウレディオが頷き返す。

「無茶なことではないです。心配は要りませんし、すぐに終わります」

真摯な瞳をしばらく見つめた末に、フェルナンド王子はゆっくりと頷いた。
「いいだろう。褒美の金でも役職でも、好きに願うといいよ……」

こうしてエミリアたち三人は、臨時の衛兵から王子づきの侍女と騎士見習いへと、格上げになった。