命の手紙

「漢字が間違っているんだ。『枕草子』ではなく『机草子』になっている」

「そんなぁ……」

「あとは……」

永遠と灰原の珍回答を正しい答えに直した。灰原の顔は珍しく沈んでいる。

初めて会った時から、もうこんなに経つのかと青空を見上げた。

もうすぐ夏休み。太陽が輝き、ゆらりと陽炎が見える。今日はいつもより暑い。

しゅんとしている灰原に、俺は声をかけた。

「まあ気にすんなよ。どんな馬鹿でも、一所懸命やれば報われるんだ」

「失礼な!私は馬鹿じゃないよ!」

「ふ〜ん」

俺は灰原をからかうことにした。たまにはいいだろう。

「じゃあ、フランスの首都は?」

「ニューヨーク!!」

「答えはパリ。ニューヨークはアメリカの州だ」

悔しそうな灰原の顔を見ると、自分がどこか勝てた気がして嬉しくなる。いつも灰原には説教をされているようなものだからだ。

「光!じゃあ今度は私が問題を出すよ」

いつものように笑いながら、灰原が言う。

「えっ?俺に勝てるの?」