替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする

洞窟に辿り着いたのは、もうあたりが暗くなりかけた時だった。



「じゃあ、入るぞ…!」

マリウスさんのその声には、ちょっと気合いのようなものがこもっていたように思えた。



(え…?)



フェルナンさんが、私の手を握ってくれた。
心配してのことだろうけど…突然だったからドキドキしてしまう。



マリウスさんがランプを灯し、私達は薄暗い洞窟の中を進んで行った。
道幅は、そう広くはない。
洞窟に入ること自体初めてだから、これが普通なのかどうかはよくわからないけど…



進むにつれて、私の中にも緊張感のようなものがだんだんと広がって行った。
もしかしたら、ここにガザン王の剣があるかもしれないんだから…



「あ……」

先頭のマリウスさんが、小さな声を発した。
そこは急に拓けた場所になっていて、奥には台のようなものがあり、その台に長細い箱が乗せられていた。



丸く盛り上がった宝箱を想像してたから、ちょっと意外だったけど、その大きさはちょうど剣が入ってるような大きさだった。
マリウスさんは、箱を見ながらその場に立ち止まっていた。



「マリウス…開けてみろよ。」

「……そうだな。」

マリウスさんの顔が、ふっとほどけ…箱に向かって歩き始めた。