替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする

そういえば、私…おばあさんの名前を聞いてなかったって、今頃になって思い出した。



「手紙をおくれ。」

「あ、はい。」



マリウスさんは、懐から手紙を取り出し、タリムさんに手渡した。
タリムさんともう一人の女性は、顔を寄せておばあさんの手紙を読んでいた。



「……ガザン王の末裔っていうのはどっちだい?」

手紙を読み終わったタリムさんが、マリウスさんとフェルナンさんを交互に見た。



「俺です。」

「もうじき結果がわかるんだね。
どうだったか、ぜひ教えておくれよ。」

「はい。では……」

「ちょっとお待ち。」



今度はタリムさんじゃない方の女性が声を上げた。
女性は、マリウスさんでもフェルナンさんでもなく、私の顔をじっと見ていた。



「あ、あの…何か?」

「以前、どこかで会ったことはなかったかい?」

「え?」



私はその人の顔にはまるで見覚えがなかった。
私がここに来てからはほぼずっとフェルナンさんと一緒にいるんだから、もし会ってたら、私が憶えてなくてもフェルナンさんが憶えてるはず。
だけど、フェルナンさんにも特に変わった様子がないってことは、フェルナンさんも会った覚えがないってことだ。



「ないと思います。」

「そうかい、そりゃあ、済まなかったね。」


私達は、ガザン王の剣を探すべく、早々にタリムさんの家を後にした。