替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする





「サキ…心配ないからな。」

「え?は、はい。」



森が目前に迫って来て、今度はフェルナンさんがそう言ってくれた。
フェルナンさんもマリウスさんも、どっちも本当に優しくて嬉しいな。



私達はついに森の中に足を踏み入れた。
特に、何か変わったような様子はない。



「今夜はこのあたりで、休もう。」

少し拓けた場所で、私達は夜を明かすことにした。
野宿なんて今まではしたことなかったけど、こっちの世界に来てからはもう何度も経験したから、けっこう平気になってしまった。
何もない土の上で眠れるなんて、私も強くなったものだ。



考えてみれば、私が最初にここに来た時も、私は土の上で寝てたんだ。
あの時は、体が痛くて身動きが出来なくて、しかもひとりぼっちだったからとても心細かった。
その時のことを思うと、今はずっとマシな状況になっている。
イケメンで優しい二人に、こんなに親切にしてもらってるんだもん。



もしも、あの時、フェルナンさんに会わなかったら…私は今頃どうなってたかわからない。



(フェルナンさんに助けられたっていうのも、私の運命だったのかな?
私には、この世界でやらなきゃいけないことがあるから、それでこうして生き延びることが出来たってことかな?)



焚き火の音を子守歌に、微睡の中で私はそんなことを考えていた。