替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする





おばあさんの家を発ってから、追っ手の気配はまるでなかった。
マリウスさんの言った通り、ガザンの悪党たちは早々に私たちのことを諦めたようだ。
もちろん、フェルナンさんを追いかけていた奴らとも接触はない。
逆の方に向かってくれていたら良いのだけれど。



マリウスさんは、地理を良く知っていて、しかも、お金もけっこう持ってるみたいで、私たちの宿代や食事代まで出してくれた。
フェルナンさんは、どこかでしばらく働いて路銀を稼ごうと言ったのだけど、マリウスさんはとにかく一刻も早く洞窟に行きたいようだった。
だから、私達の分も出してくれたのかも…



「なぁ…あんたら、本当に兄妹なのか?」

フェルナンさんが外出していた時、マリウスさんに訊かれてしまった。



「え~…ど、どうしてそんなことを?」

「だって、全然似てないし。
兄なのに『フェルナンさん』なんて呼んでるし。
それに、あんたのその腕輪……相当、高価なもんだよな?」

「え…そ、そんなこと…」

私は、腕を後ろに隠した。



「もしかして、あんたは貴族の娘か王族で…
フェルナンはあんたの護衛じゃないのか?」

私は反射的に頭を振った。



「ち、違います!
私は庶民の娘です。
じ、実は私、記憶をなくしてて…フェルナンさんは、そんな私を面倒見てくれているだけです。」

「記憶を…?
でも、それだったら、庶民の娘かどうかわからわからないじゃないか。」

「あ……」

なんだかまずいことを言ってしまった。
しかも、フェルナンさんと兄妹じゃないことまで話しちゃった。
まぁ、すでにマリウスさんはそんな嘘は見抜いてたみたいだけど。