「ところで、聞いたか?
山の麓に魔法使いが住み着いたって話…」

「あぁ、それなら聞いた。
よぼよぼの婆さんだって話だな…」



斜め前の席に座ってたおじさん達の会話が、耳に入って来た。



「その山ってどこなんだ?」

マリウスさんは急に立ち上がり、おじさん達の席に行ってそう質問した。



「この町の南のはずれの山だ。」

「そうか、ありがとう。」



マリウスさんはまた私たちのテーブルに戻って来た。



「なんだ、魔法使いに興味があるのか?」

「……まぁな。」

「会いに行くのか?」

「あぁ…あんたらは宿屋で待っててくれ。」

「わかった。」



私達は、一番近くの宿屋に向かった。



「ここに泊まることにしよう。
じゃあ、行って来る。」

「あぁ、気を付けてな。」

そう言って、マリウスさんを見送って…



「……行くぞ。」

「え?」



フェルナンさんは、宿屋には入らず、マリウスさんの後をつけ始めた。



「あ、あの…どうして?」

「あいつが信用して良いやつかどうかを確かめたい。」

「あ……」



確かに、マリウスさんは自分のことをあまり話さないから、心配と言えば心配だけど…
でも、フェルナンさんがそこまでマリウスさんのことを疑っていたとは、ちょっと意外な気がした。
考えてみれば、大きな町には行くな、多くの人とは接触するなと言われて育った人だもの。
疑うのも当然かもしれない。



でも、だったら、なぜ私のことを助けてくれたんだろう?
家にまでいさせてくれて…
親切心なのかなぁ??
私は、フェルナンさんの横顔をのぞき見た。
見たってなにもわからなかったけれど……