「あの……私と結婚する方を魔法使いが決めるというのはどうしてなんですか?」

「それはだな…
私は当然、私が相手だと思っていたし、そうするつもりだった。
だが、マーカスがそのことに異議を唱えたんだ。」

「マーカスさんが…?」

「あぁ。それは私のことを考えてのことだ。
私とオデットは子供の時からの知り合いでな…
もう家族のような間柄だった。
マーカスはそれを知っている。
だから、私をオデットと結婚させ、自分が犠牲になろうとしたんだな…
あ、失礼。
君がいやだとか、そういうことではないんだ。
アーリアの神託は絶対的なものだし、仕方がないと思っている。
それに、君と会って、君が素敵な人だということもわかった。
話はそれたが…つまりはそういうことで、私もマーカスもどちらも引かず…
それで、困った陛下が、魔法使いの神託にお任せになったんだ。」

「そうなんですね……」



マーカスさんって、すごくお兄さん想いなんだな。
ご自分にも好きな方がいらっしゃるのに…
そして、ルーサーさんも…



大巫女アーリアの御神託ってやつさえなかったら、みんなが幸せになれたのに…



「アーリアの神託には、絶対に背けないのですか?
そんなに価値のあるものなんですか?」

「シャルア…今更何を言ってるんだ…
この世界に、戦争のひとつもないのは誰のおかげだと思ってる?
アーリアのおかげだ。
彼女の神託のおかげじゃないか。
それに、ガザンのことは君ももちろん知っているだろう?
自分の国をあんな風にしたいか?」

私は必死に首を振った。
この国をガザンのようにはしたくないからこそ、私は、替え玉になったんだもの。



(やっぱり、この状況を変えることは無理なんだね…)