「シャルア…ルーサー様と一曲踊って来たらどうだ?」

「は、はい。」

「体調の方は大丈夫なのですか?」

「はい、大丈夫です。」

「では、よろしくお願いします。」



ルーサーさんに手を取られ、私はダンスの輪の中に進み出た。
皆が、私を見てる…
かなりのプレッシャーだけど、緊張しないように…
私は、ルーサーさんに気付かれないように、小さく深呼吸した。



ここにはCDもパソコンもないから、演奏はすべて楽団の生演奏だ。
却って、生の迫力みたいなものがある。
ゆったりした曲に合わせて、私は練習の成果を発揮する。
ルーサーさんのリードがうまいから、安心して身を任せられて、緊張した気持ちも少しずつほぐれていった。



「シャルア様…本当にお元気になられて良かったです。」

「ありがとうございます。」

「しかも、こんなにお美しくなられて…以前、お会いした頃は、お互いまだ子供でしたからね。」

「そ、そうですね。」



美しいだなんて…お世辞とわかってても、こんなイケメンに言われたら、なんだか嬉しいものだね。
ふと視線を動かした時、壁際にいるフェルナンさんと目が合って、私は反射的に目を逸らした。



なんだか妙に恥ずかしかった。
だって、フェルナンさんは私が本当のシャルアさんじゃないことを知ってるし…
私は、今、将来、結婚するかもしれないルーサーさんと踊ってて…



恥ずかしいだけじゃなくて、どこか後ろめたいような気分もあって…



私がフェルナンさんのことを好きだってことは、気付かれてるかどうかわからないけど…
それでも、とても落ち着かなかった。