替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする

シェザーの対戦が終わると、私は宿屋へ戻った。
特に疲れたというわけではないが、私は長椅子に体を投げ出した。
天井を見つめながら、私は先程のことを思い出していた。



ルーサーの印象は、そう悪くはなかった。
まず、見た目は文句なしだ。
髪のまとめ方や、服の着方を見ても、とても几帳面な男のように思えた。
性格は負けず嫌いではあるが、大勢の観客の前でも素直に負けを認める潔さも持っている。
シェザーの戦い方を見ても、論理的だし、卑怯な手は使わない。



（あのルーサーなら……
きっと、サキは幸せになれるだろう…）



そう考えた時、私は気分が苛々とするのを感じた。



（ほんの数時間一緒にいただけで、奴の本性等、わかるはずがない。）



そう思い直すことで、苛々は少しおさまった。



もう少し時間があれば…
そして、もっといろいろな会話を交わすことが出来たなら、もっとルーサーのことがわかっただろうが、シェザーの時はあまり話はしないものだ。
ましてや、初対面でもあるし、話せないのも当然だ。



また明日も集会所へ行ってみようと思った。
何度か顔を合わしていたら、もっと話をする機会が増えるだろうから。