「あ、あの…
ガザンの再興は進んでいますか?
フェルナンさんは、宰相になられたのですね?」

私は話題をすりかえた。
フェルナンさんの私を想う言葉が、辛かったから。



「フェルナンが、一緒に来たいって言ったから、その口実で宰相ってことにしたんだ。」

「そうなんですか?幼馴染の人には会えたのですか?」

「あぁ…無事に会えたよ。
それに、国王陛下にもお会いすることが出来た。」

「それは良かったですね。」



私とマリウスさんが話してる間、フェルナンさんは黙って私をみつめてた。



「サキ……逃げよう。
おまえが犠牲になることなんてない。」



(逃げる……?)



フェルナンさんは本気だ。
今、ここから逃げ出せば…私は、見知らぬ王子と結婚することはない。
元の世界に戻ることは無理だろうけど、フェルナンさんときっと一緒に暮らしていける…



(でも……)



そんなこと、出来るはずがない。
この国を滅びさせてしまうことも、シャルアさんを悲しませることも…
私には出来ない。



「フェルナンさん……」

涙が止まらない。



「サキ…心配するな。
私が、おまえのことを護るから。」

フェルナンさんが、私の体を抱き締めた。



「フェルナンさん…
私……」

「サキ…今すぐここから出て行こう!」

「フェルナンさん…私…行けません。」

私がそう言うと、フェルナンさんは私から体を離し…私の顔をじっとみつめた。