「本当か?そいつは助かる。
やっぱり、お前に会いに来て良かった。」

「当たり前だろ。
おまえのためなら、僕はいくらでも協力する。」

アンセルに会いに来たのは本当に正解だった。
彼は、やっぱり頼りになる奴だ。



「マリウス、僕はそろそろ帰るよ。
明日も早いからね。」

「え?じゃあ、俺も……」

「君はまだ良いじゃないか。
まだ酒も残ってるんだし、ゆっくりしていきなよ。」

「そうか?じゃあ、そうさせてもらうよ。」

アンセルは手を振り、酒場を後にした。



陛下との謁見も済んだ。
陛下は、ガザンの血が途絶えてないことを喜び、再興に協力することを約束して下さった。
本当にありがたいことだ。
アンセルも力になってくれるし、ガザンの再興は思ったよりも順調だ。
だが、俺には一つだけ気がかりなことがあった。
それは、サキのことだ。



彼女は記憶を取り戻したと言った。
自分は、城の侍女だったとも…
だけど、なにかがおかしい…
彼女の態度は、何かを隠しているように感じられた。



(俺の思い過ごしなら良いんだが…)



「マリウス!」

急に名前を呼ばれて振り向くと、人をかき分け、俺のテーブルに向かう男の姿があった。
それは、意外にもフェルナンだった。



「フェルナン…どうしたんだ?」

「……会えて良かった。
実は、大変なことがわかったんだ。
マリウス…サキはどこだ?」

フェルナンはあたりを見回した。



「それが……とにかく、まぁ座れよ。」

フェルナンは、ついさっきまでアンセルがいた席に腰を降ろした。