「……どうかしたのか?」

「す、すみません。
私…体が痛くて起き上がれなくて…」

「怪我でもしたのか?」

「いえ……」

「じゃあ、病気か?」

「わかりません。」



今のところ、悪い人には思えないけど、結論を出すにはまだ早そうだ。



「どこに住んでる?ランダスの村か?」

「ランダス…?」

まるで外国の地名みたいだ。



「じゃあ、ブラッサか?」

「いえ…ち、違います。」

おかしい。
当然ながら、うちの近くにそんな地名はない。



私も薄々感じてたんだ。
なにかがおかしいということに。
ここがうちの近くじゃないってこと、心の奥では感じてた。



「じゃあ、どこから来たんだ?」

「わ、私……そう!…記憶がないんです。」

「えっ!?」



本当のことを言っても良いのかどうかわからなくて、私は咄嗟に嘘を吐いた。
信じてもらえるかどうかはわからなかったけど…



「頭を打つと、一時的に記憶を忘れることがあるって聞いたことがある。
それじゃあ、あんた…」

「は、はい、頭を殴られたみたいです。
い、いたっ。」

私は、頭をかばうように手をやった。



「それは大変じゃないか。
とにかくうちに行こう。」

「えっ?で、でも…」

「靴も履いてないじゃないか。
さぁ、早く……」

そう言うと、男性はひょいと私を背中に乗せた。