大学で知り合った友達のリサと雪乃と3人でランチを食べていた。
きっかけは、リサが紺野君の話を出したこと。

「紺野君、結構落ち込んでるみたいだよ。本気っぽいしさ、デートくらいならしてみるのもアリかもよ。いいヤツだし」

紺野君は3日前に告白されてお断りした人。

「いい人なのは知ってるけど、私彼氏いるし」

「その彼氏だけど…。大地君、だっけ?」

そう、大地は私の彼氏で、美陽と同じ予備校で同じ地元の医学部を目指して頑張ってる。

「いくら浪人してるからって、5ヶ月も連絡してこないんでしょ?正直、向こうはもう別れたつもりってのもあり得る」

いや、と明るく否定しようとした声は喉の奥の方に引っ掛かる。普通の感覚では、大地の態度はそう受け取れるってこと?

隣に座っている雪乃も、うん、と頷いて続ける。

「待たせてる方なんだし、普通はもうちょい気を遣うっていうか。とりあえず、桜をこんな寂しそうな顔にさせないと思う」

きゅっと、雪乃に頬を摘ままれる。

寂しそうな顔…してるかな。
もしそうなら、それは連絡が無いのが寂しいんじゃない。
リサに「もう別れてるつもりかも」
って言われて否定できなかった自分が、不安になってる自分が寂しいんだ、きっと。

「連絡しないでって言われてるの?」

「いや…。最後に会ったときは、浪人始める直前だけど、いつでも連絡してって」

「しないの?」

「うん…」

俯いた私の頭を雪乃がポンポンと叩く。

「まあねぇ、桜が一生懸命大地君のこと考えてるのは知ってるしねぇー。ごめんごめん、言い過ぎた」

リサも焦ったようにグラスを置いてぐっと近づいてくる。

「ごめん。紺野君なら桜とお似合いだって思ったら早まっちゃって。まぁ1つの考えとして聞いてほしいけど、なんていうか、そんなに重く恋愛しなくってもいいんじゃない?」

「そうそう、待ってあげられるのは凄いステキだし、いいと思うんだけどね」

笑顔で締め括った二人に、私もつられてありがとって笑ったけど、この会話は私に、思ったよりも大きなダメージを与えたらしい。