「ジャラール様……もう私を置いて、行って下さい。」

「諦めるな、ハーキム。」

二人はまた、駆け上がる準備を始める。

どうしよう、どうしたらいいんだろう。

焦る中で私の頭の中に、ふと何かが思い浮かんだ。


"どこかで、この場面を知っている"


どこだろう……

そんな事を考えているうちに、目の前にハーキムさんの姿が現れる。

「クレハ!」

ハッとして手を伸ばすと、タイミングが合わなくて、またハーキムさんは落ちて行く。

「ハーキムさん!」

するとジャラールさんが、体を揺らしてハーキムさんを捕まえる。

「大丈夫だ、クレハ。」

ジャラールさんは、私に向かって微笑んでくれたけれど、短剣一本でずっと体を支えているせいか、その笑顔は歪んでいる。

どうしよう。

本気でなんとかしないと。

私は泣きそうになりながら、ラクダを見る。

もしかしたら、何か助ける道具とかないかな。