「あのさ。そんな時に聞くのもあれだと思うけど、」

光清はバッグの中から、ごそごそと何かを取り出した。

「さっきのジャラールさんって……この本に出てくる人?」

「えっ‼」

私は一変に病気が治った人みたいに、体を真っ直ぐに起こした。


光清が持っていたのは、あの日、私が資料室で手に取った本だ。

「その本、どうして!?」

「あの後、すぐに借りた。」


私は光清は、じっとお互いを見つめ合った。

「どうして……」

「ごめん。なんだか気になって。」

光清はそう言うと、その本をペラペラとめくり始めた。

「ほら、ここに。」

開かれたページには、ジャラールさんとハーキムさんの名前が。

「この本の夢を見てたの?」

「夢?」


夢と言うには、あまりにも現実的過ぎる。

ハーキムさんと乗ったラクダの感触も、二人の声も私には生々しい。


けれどそんな事言ったって、光清には通じない。