月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~

と、まではいかなくても、せめて中央に大きなソファがあってほしい。

扉の取手に右手を掛け、そっと開けてみた。

暗い部屋の中には、当たり前だけど、社員旅行に行く前と同じ風景。

そりゃそうだよね。

電気をつけて荷物を床にドサッと置くと、スーツのまま横になった。


ジャラールさんのベッドの、ふかふか感には負けるけれど、疲れた体を支えてくれるだけマシ。

ジャラールさんか……

『ずっと待っているから。』

そう言ってくれたジャラールさんの顔が、目に浮かぶ。


家に帰る間際、光清が私に言ってくれた。

「資料室に返す前に、知り合いに頼んで、最後の部分訳して貰おうと思うんだ。」

「最後の部分。」

「うん。紅葉が関わった事で、物語の最終がどんな風に変わったか、知りたいんだ。」

「そっか……」

私が関わった事でねぇ。

光清が持っているその本を、改めて見た。

「訳してもらった後、紅葉にも教える?」