月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~

家に辿り着いたのは、日もとっくに暮れた後だった。

「ただいま。」

キッチンから、お玉を持ったまま、母親が出てきた。

「お帰りなさい。」

何かを期待してるような顔。

私はまだ、それが何に対しての期待なのか、分からないでいた。

その意味が分かったのは、走ってきた弟の一言を聞いてからだった。

「姉ちゃん、お帰り。お土産は?」

「あっ。」

私の“あっ”に、二人供、顔をしかめた。

「もしかして姉ちゃん……」

「お土産買って来なかったの?」

「ごめん。それどころじゃなかった。」

とりあえずそう答えて、荷物を片手に、自分の部屋への階段を昇る。


「それどころじゃなかったって、何かあったの?」

母親は、心配そうに聞いてきた。

階段の途中で、足を止める。

たぶん、砂漠の国へ行った話など、母親に言ったって、信じてくれないだろう。

「うん。まあ……いろいろあってさ。」