ああ。

胸がドキドキして、急に眠気が覚めた。

「ジャラールさん。もう一人で歩けます。」

「いいから、もう少しこのまま、じっとしていろ。」

王子様なんだから、当たり前なんだろうけど、今さらながら、ジャラールさんの命令口調に、胸が高鳴る。


うるさくないのかな。

私の心臓の音。


「ほら、到着だ。」

そこは、昨日の夜泊まりかけた、ジャラールさんの部屋だった。

「ありがとうございます。」

もう降ろしてもらおうと、足に力を入れた。

「まだ、ここでは降ろさぬぞ。」

ジャラールさんに、また足を抱え込まれた。

「ジャラールさん?」

何を考えているのか、ジャラールさんは寝室の扉を開けた。

「えっ?えっ?」

驚いて後ろを見たけれど、付いて来ているはずのハーキムさんがいない。

なんで?

肝心な時にいないんだ、あの人は!!


「さて。お姫様、ここへどうぞ。」

ジャラールさんにそっと降ろされたのは、ふかふかのベッドの上。