月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~

「いいだろう、話を聞こうではないか。」

「有難うございます。」

ハーキムさんは、頭を下げると立ち上がった。

「ラナーは自分の意思で、ネシャート王女の命を狙ったわけではありません。ある者の命令です。」

「ある者?ある者とは誰だ。」

「それは……」

言おうとしたハーキムさんの腕を、ラナーが掴む。

「ハーキム様。もういいのです。」

「ラナー、しかし!今のままではそなたの命が!」

ラナーは左右に首を振った。

「この場に連れて来られた時点で、もうハーキム様の妻にはなれません。あなたの妻になれぬなら、この命はいらないのです。」

「ラナー!」

ハーキムさんは、涙を流すラナーを腕の中に引き寄せた。

「そんな事、構うものか!」

「ハーキム様?」

「一度妻にと決めたのだ。誰がなんと言おうと、私の妻はラナー、そなただけだ。望みを捨てるのはではない。」

ラナーは何も言わなかった。