月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~

番人から上手く鍵を盗んだハーキムさんが、牢屋から出てきた。

「ラナーはどこにいるの?」

「こっちだ。」

ハーキムさんが指差す方へ、二人で走る。

途中、さっきの番人に見つからないように、足を止め息を潜めながら。


角を2つ程曲がった頃。

私達はラナーを見つけた。

「ラナー。」

ハーキムさんの声に驚き、ラナーは鉄格子に近づくどころか、奥へと身を隠してしまった。

「ラナー、私だ。近くに来て、顔を見せてくれ。」

「合わせる顔がありません。」

いつもと変わらない冷静な声。

ラナーは、こんな暗い地下牢に連れて来られ、そこで婚約者に会ったとしても、心は掻き乱されないのだろうか。

それも、そのように育てられたから?

だとしたら、悲しい。

ラナーにだって、こんな時くらい、心を掻き乱されたっていいはずた。


「ラナー。」

私もハーキムさんのように、鉄格子に近づいた。