「ああ、そうですか。」

ある意味すごいな。

自分の婚約者、取り調べにあうかもしれないのに、全く動じないなんて。

「ハーキム。明日、父上に宝石の事を話そうと思う。そうすれば間もなくお前は、ここを出られるだろう。その後すぐネシャートの元へ。」

「承知しました。」

ハーキムさんが頭を下げると、ジャラールさんはあの階段がある裏道へ急ぐ。

「クレハも早く行け!」

ハーキムさんに言われ、急いでジャラールさんの後を追う。


さすがは身軽。

ジャラールさんは、軽やかに階段を駆け上がる。

一方の私は足が上がらず、息もゼーゼー言っている。

「ジャラールさん……もう上まで行ったかな……」

右足、左足と一歩ずつ足を上げていたら、突然目の前にジャラールさんの足が。


「へっ?」

顔を上げると、涼しい顔のジャラールさんがいた。

「このくらいで動けなくなるとは。体を鍛えてはいないのか。」