ハーキムさんが、ジャラールさんに近づく。

「あのままでは、クレハが牢屋に入れられる事になる。私であれば、まず死ぬ事はないと思ったのでしょう。」

「どうだったかな。」

そう言ってジャラールさんは、私にウィンクをした。


ハハハ……

嬉しいけれど、複雑な気分。

私の代わりに牢屋に入れられるって。

だけど私がジャラールさんに微笑みかけた瞬間、ハーキムさんの鋭い視線。


はいはい。

必要以上に近づくなって、ここに来る前にイチャイチャしそうになったよ。


「だとしたら、ネシャートの側近を疑わざるを得ないな。」

「ラナー達ですか。」

私はハッとする。

「ラナーさんをどうする気?ハーキムさんの婚約者だよ?」

ジャラールさんもハーキムさんも、眉一つ動かさない。

「ハーキムさん?」

「ラナーが何かをしたと疑っているわけではない。ただネシャート様の周りに起こっている事を、淡々と調べるだけだ。」