「あまりの美しさに、これを持って来てしまったのです。まさかネシャート様が病に臥せる事になり、あなた様がそれを見つける旅に出るなど全く知らずに。」

「ではなぜ、クレハが宝石を持っているのだ。」

「恐ろしくなって、こっそり服の中にいれたのです。クレハならば、ジャラール様はお許しになるだろうと。」


するとジャラールさんは起き上がり、刀を鞘から抜いた。

「ジャラールさん!ハーキムさんは悪くない。嘘を言っているの!」

「黙っていろ、クレハ。」

低い声と共に、ジャラールさんの刀が、ハーキムさんのな首元に添えられる。

「ハーキム。私を騙せると思ったのか?」

「……思ってはいませんが、真実を述べただけです。」

「そこまで言うのであれば、覚悟はできているんだろうな。」

「はい。」

するとジャラールさんは、刀を鞘に収めると、焚き火の前に座った。

「今夜は眠れそうにないな。」

そう言ったきりジャラールさんは珍しく、口を閉じてしまった。