ちはるのお宮参りの日は心地いい風が渡る秋晴れだった。
 残念ながら征一郎さんは仕事で都合が合わなかったけど、ウチの両親と、洋秋達も来てくれて近くで一番大きな神社にお参りした。

 その後でヤマトも合流して由弦にちはるを会わせた。

 白のベビードレスに、レースをあしらった可愛い帽子。おくるみに包まれた小っちゃな眠り姫を抱き、真下家って彫り込まれた石を見下ろす。

「由弦。・・・ちはるだよ。あんた似の凛々しいお姫さま」

 日が経つにつれみんな口を揃えて言う。女の子にもモテそうって。
 カワイイ王子の廉と、将来どうなるか楽しみだね。
 
「みんなにおんぶに抱っこで、どうにかガンバって子育てしてるから。心配しないでよ」 

 あたしは小さく笑う。

「オムツも風呂もオレ出来るんスよ」

 ヤマトが後ろから得意げに。
 ほんとイイ保父さんになれんじゃないかと思う。割りと。
 
「ちーちゃんを守れるよう、しっかりレンを育てるね! 由弦クン」

 首も座ってきて、アーとかウーとかお喋りも始まった廉。鈴奈さんに抱っこされて、ご機嫌だ。 
 長かった髪もバッサリ、ショートボブにした彼女はエレガントな美人から朗らかな美人て印象に変わった。 
 
「ちはるの子守りもいいが、お前は本業を忘れるなよ?、大和」

 洋秋が溜息雑じりで。
 由弦の後任を託されて、ヤマトは若頭代理になったんだそう。

「分かってます。・・・兄貴に殴られるようなマネは絶対しないんで」
 
 なんだか最近、急に大人びたヤマトがしっかりそう話すのを。微笑ましいキモチで聴いてた。







 由弦。

 流れる時間の分だけ少しずつ。みんなの悲しみや口惜しさは、薄らいでくのかも知れないね。

 忘れるわけじゃないよ。生きてくのに必要なんだよ。ずっと苦しい傷みを連れたままじゃ、辛くて人は擦り切れちゃうから。


 あたしもね。笑えるようになった。・・・泣いてるヒマが無くなった。
 こんなに小っちゃいちはるが懸命で。すっごく愛おしくて。
 泣いてばっかりもいられないよ。
 
 由弦ならきっと。
 あたしとちはるが幸せなら文句なんかねぇって。目を細めて笑うね。




 ねぇ由弦。
 あたしは、ちはるをシアワセにする為にちゃんと頑張る。
 挫けたり折れたりしないで、この子が独り立ちするまで母親の役目をちゃんと果たすよ。

 それだけは約束するから。



 ココロの中できゅっと噛みしめた。






 たった一つだけ。・・・・・・ワガママを赦して。あたしの為に。