花立の花は。お母さんがフラワーショップで一本一本選んでくれた。
 仏花じゃ味気ないからって、白ユリにトルコ桔梗、スラリとした感じの花が涼し気に。・・・うん。由弦によく似合う。 
 はなむけに。おばあちゃんお手製のボタモチをみんなでいただいて、由弦にもおすそ分け。
 実はアンコ苦手だって内緒のままでいいよね?、・・・由弦。

 お父さんは何だか涙もろくなって。そこそこメタボだった体が小さくなって見えた。
 洋秋も征一郎さんも。あたしの前じゃ一度も涙を見せない。背筋を張り、毅然と立ってあたしの手まで引こうとしてくれる。

 鈴奈さんだって身重なのに。あたしを気遣ってムリさせたら、由弦に叱られるね。
 





 由弦。

 
 桜御影石の墓標を見つめ、ココロの中で話しかける。


 ごめんね。

 寂しくて悲しくて、辛くて苦しくて。・・・毎晩泣いてる。

 ちはるに心配かけちゃうって分かってるんだけどね。

 夜が来て一人になると。由弦がもう帰ってこないって、たまらなくなる。

 今すぐ抱き締めてキスして欲しいって。心細くて、たまらなくなる。

 瑠衣って。呼んで?

 声・・・聴きたいよ。

 好きって言って。愛してるって。
 
 由弦がいないとあたしは。

 もう。






 でもちはるを必ず無事に生むから。

 それが征一郎さんとの約束だから。



 ぜんぶ終わったら。





 由弦に逢いにいくね。