「・・・・・・瑠衣子」

 征一郎さんがあたしを由弦から離そうと。
 首を横に振って頑なに拒む。

 
 離れたくなかった。
 
 もう。瑠衣って呼んでくれないって分かってても。

 腕に抱き締めてもらえないって分かってても。

 一緒にいさせてよ、おねがい。

 あたしから奪(と)らないで。
 
 由弦を独りになんかしない。

 どこにもいかない、あたしは。
 

「・・・・・・由弦のそばに、いる・・・。ずっと・・・・・・」

「瑠衣子」

 征一郎さんが由弦にすがりつくあたしを引き剥がし。
 胸元に抱き留められてもがく。

「やだ・・・、放して。一緒にいる、・・・由弦と・・・っっ」

「駄目だ」

 力強い腕は、抵抗するあたしを決して逃そうとしなかった。

「お前が由弦を、葬送(おく)ってやらないでどうする。・・・最愛の女だろうが」


 
 悲しみだけが渦巻くあたしの中に。
 ナニかが落ちて。

 微かな。波紋を広げた。