「結婚のお祝いパーティしなきゃだねぇ・・・」

 あたしは小さく笑った。いつかは来るべき日が来た、それだけのこと。
 『おめでとう』も言える。そのぐらいには大人になった。

 言いようの無い喪失感、寂しさ。手の届かない口惜しさもある。
 あたしの方が鈴奈さんよりよっぽど洋秋を知ってるって。
 物心ついた時から一緒だったんだから、って。

 でも。洋秋が幸せならいい。
 鈴奈さんを選んでシアワセそうだからいいんだ、・・・もう。
 
 頭で思ってるのと違うものが。目から零れ落ちた。
 
「・・・泣くな、バーカ」

 由弦が片腕であたしの頭を抱き寄せ、自分の胸に押し付ける。 

「瑠衣には俺がいるだろが。・・・俺にしとけ」

 その科白も何十回・・・何百回、聴いたか。
 あたしと同じくらい、あたししか見てないバカ男。 


「・・・うるさい。あんたなんかキライ・・・」
 
 決まってそう答えると、もっときつく抱き寄せられる。

「俺はお前が好きだよ」
 
 頭の天辺に何度もキスが落ちて。そういう時ばっかり甘い声する。


 ・・・ほんと、自分にムカつく。
 弱ってると、どんどん由弦に流されてくから。