迎えに来た車に乗せられ、鈴奈さんに抱えられるようにして警察で説明されても。自分のことじゃないように。遠い誰かのことみたいに。

 朝は何時に出かけたのかとか、気になる様子はあったかとか。向かいに座った刑事があたしに訊ねた。

 そんなの・・・・・・。
 いつもどおりだよ。

 『行ってくる』もキスも。いつもの朝と一緒。

 遅くなんないで帰るって。
 
 だから今日だって。

 帰ってくるに決まってんじゃない。

 いつもと同じに。

 『瑠衣』って。『チハル』って。

 あの淡い笑顔で。呼んでくれるに決まってる。 



 

 帰ってこないわけない。

 
 由弦が。


 あたしとちはるを遺してくわけない。


 絶対に、ない。


「・・・・・・死ぬわけ・・・ない」 

 
 信じない。
 

 信じない。
 
 信じない。

 信じない。




 ねぇ由弦? なんで電話に出ないの。
 いつもすぐ掛け直してくるじゃない。
 あたしが出ないと着信の嵐にするクセに、あんたのスマホ、今頃あたしの着信だらけだよ?
 『どうした?』って。ねぇ言ってよ。
 『すぐ帰るに決まってんだろ。・・・ドアホ』って。

 笑ってよ。
 いつもみたいに。


 はやく、帰ってきてよ。由弦。




 ちはると待ってるから。