差し出されたティッシュで涙を拭き、鼻をかむ。
 落ち着いたところで肝心なコトを由弦に訊ねた。

「・・・この子の名前、教えて?」

 目を合わせると淡く笑みが返って。
 
「チハル」

 ちはる。

 ましも、ちはる。・・・・・・うん、いい響き。

「男でも女でもチハルだ」

 そう・・・来た?
 自分のお腹に目を落として。

 すごいねパパは。どうやって考えたんだろーね?
 それに、ちゃあんと『る』が入ってる。お揃いだよ?
 
「・・・字は?」
 
「顔見てからだな」

 顔見て、って。
 視線を戻して思わず吹き出す。

「・・・悪いのかよ」

 あ、拗ねた。
 
「いいんじゃない? 千の春か、千の晴れか、どっちが似合うか楽しみだね」
 
 悪戯気味に笑んで。
 由弦の首に両腕を回すとこっちに引き寄せ、あたしからキス。啄んで由弦の唇を食べた。
 ゆっくり体重がかかってソファに仰向けに倒されながら。由弦がしなやかに逆襲を始める。

「・・・激しいのはダメだよ・・・?」

 パジャマ代わりのスェットの中に潜り込んだ手に躊躇えば。

「分かってる・・・」
 
 自分の体をずらして、あたしを圧迫しないよう丁寧に慎重に。下だけ脱がされ、指と舌が優しく這い回る。
 次第にあたしの理性だけが飛ばされて、何度か絶頂に押し上げられた。
 そのあとで、由弦はゆっくり撫でるようにあたしの中に入ってきて。
 ただ味わうだけみたいな繋がり方をした。


 
 ねぇ、あたしが由弦をこんなに愛してるって。
 ちはるに伝わったかな。

 カラダの隅まで由弦でいっぱいで。ココロなんて溢れちゃって。


 ちはるは憶えてるかな。
 あたしの中には由弦の愛しか流れてなかったこと。
 ちはるは。由弦の愛で出来てること。