あたしなんかね。子供の名前は、追い追い二人で考えようって。呑気に思ってた。
 お腹なんか全然ぺちゃんこで、エコーの写真見たって父親からしたら『コレ?』ってレベルだと思う。
 でもあんたはちゃんと自覚してるんだね。・・・思ってるよりずっと。

 嬉しい。・・・ちょっと口惜しい。
 “お母さん”になったあたしより先を行かれてる。
 敵わないなぁ、ほんとに。
 ・・・脱帽。ううん完敗かも。
 どっか力が抜けた笑いで。

「いいよ。・・・あ、でもキラキラネームは却下だからね?」
 
「その辺のガキと一緒にすんな」 

 腕が伸びてきて由弦に抱き寄せられた。肩に寄りかかって躰を預けると、髪を撫でてくれる。

「あのな」

「うん」

「最初から名前で呼んでやりてぇんだよ。・・・どんなに小さかろうが」

 優しい声がした。

「もう瑠衣の中で生きてんだ。親ならそうしてやるのが当然だろ」 

「・・・・・・うん」

「今はそれぐらいしか父親の役目も思いつかねぇから、俺が決める。・・・いいか?」

「・・・うん」 
 
 あたしは鼻をすすった。

「なんで泣くんだよ。・・・ドアホ」
 
 子供をあやす口調で由弦が笑った気配。
 
 そんなの。泣くに決まってんでしょ。
 だって。
 どんだけ由弦があたしとこの子を愛してるって。
 これでもかって思い知るんだよ。

 どんだけあたしをシアワセにすれば気が済むのよ。
 いつか弾けちゃいそうだよ、由弦の愛情でパンパンに膨らんで!