「瑠衣ちゃん、おめでとーっっ。由弦クンありがとぉ!」

「どーいたしまして」

 鈴奈さんに感謝され、涼しい顔で口角を上げてみせた由弦は、グラスのビールを一気に半分まで呷った。

「2ヶ月違いじゃ双子みたいなもんだな」

 洋秋が嬉しそうに言うからあたしも笑顔で。 

「ほんとだね。病院も鈴奈さんと一緒だし、すっごく心強いよ」


 洋秋家のリビングで、今夜はあたしのおめでた祝いが開催されてる。
 もう6週目に入る頃。ウチの両親も大喜びで、おばあちゃんはひ孫がいっぺんに2人だって知り合いに自慢してるらしい。

 あたしの感想としては。まあサッカーに例えれば、由弦がPKで壁を突破して、最初から狙ってたところにゴール決めた。・・・的な?
 検査薬で陽性反応が出た瞬間、『ゴォォォールッッ』ってアナウンサーの絶叫とホイッスルが聴こえたからね。脳内で。

 トイレから出て、それを見せた時の由弦の顔は。はにかんだような、嬉しさを噛みしめてるような。あんな表情はじめてだった。
 次の日には病院に連れて行かれ、仕事も今月いっぱいで辞めることにした。引継ぎが大変な仕事でも無かったし、渋られず承諾してもらえて助かった。


「瑠衣ちゃんは9月ね。暑くて大変そうよねーお互い」  

「夏バテしないよーに気を付けなきゃだね」
 
 お腹がふっくらして来た鈴奈さんも今のところ順調で。
 あたしのお腹の中の命は、まだほんとに小さいけど。何だろう。ああ、ここに居るんだって。無条件で愛おしさが込み上げてくる。
 
「由弦はどっちがいい」

 洋秋に視線を傾げられ、由弦はあたしを見やって言う。
 
「瑠衣に似た娘。・・・だな、やっぱり」

「そうなったら一生嫁に出せないだろうが」

「出さない」

「女の子だったら大変ねー、瑠衣ちゃん」 


 他人事みたいに笑ってるけど鈴奈さん、洋秋も変わんないと思うよ?