一人暮らし歴が長い分、由弦は言わなくても家事を手伝ってくれる。
 ・・・いやどっちかって言うとあたしが手伝ってる?
 洗濯物干すのもお風呂掃除も由弦のほうが手際いいし、料理に至っては包丁さばきからして負けてるし。

「・・・・・・あんたの方が主婦に向いてる気がしてきたわ」

「慣れだ、こんなもん」

 玉ねぎをひたすら炒める係のあたし。隣りでリズミカルに人参とじゃがいもを切り分けてく由弦。今夜はカレー。

「瑠衣だって一生懸命作ってくれてんだろが。十分だよ、俺は」

 さらっと言われる。・・・ほんと、こいつはあたしに甘すぎです!

 スマホで簡単レシピを検索しながら、バランスが偏らないよう頑張ってるつもり。ただどうしても、おばあちゃんのゴハンで育ったせいか和食が多いと思う。煮物とかおひたしとか。

「・・・マズイ時はちゃんとマズイって言ってよ? あとさ、アレが食べたいとか、もっと注文つけていーんだからね?」
 
「ああ」

 口角上げて笑んでみせるけど。ぜったい甘やかす気だな、もう。
 不本意そうに溜め息吐くと。
 
「不満なんかねぇよ。分かんねー女」

 ドアホって横目が笑ってる。
 そういうものか? 
 ・・・フツウのダンナの甘さ基準がよく分かんないよーっっ。