よくよく考えればこの面子って。ヤクザの中にあたしが一人、ぽーんと入っちゃってるワケなんだけど。
 当然ながら洋秋達が裏仕事の話をすることは無いし、どこのキャバクラの誰がカワイイとか、どこのホステスが由弦に入れあげてるとか、ヤマトがよもやま話で盛り上げてくれる。割りと気ぃ遣いでイイ子だ、ほんと。

「瑠衣は、仕事はどうだ?」

 顔を横に向け口許から紫煙を逃した洋秋が、こっちを見て言う。

「忙しかったりヒマだったりかな。これから、年末の駆け込みがあるんだろうけどねー」 

「何か困ったらすぐに言え。いつでも助けてやるからな」

「ありがと。頼りにしてる」

 あたしがにっこりすると、洋秋も淡く笑んでくれた。

 ・・・まあ。あたしが勤めてるリフォーム会社は地上げもやんないし、掘削権で揉めるとか、どうしようも無くなったら相談するわ。あはは。



 それからも洋秋をうっとり眺め倒し、肴にしつつ気分良くチューハイで飛ばしてたら。由弦にストップかけられた。

「・・・瑠衣。もうその辺にしとけ」

「エー、まだいけるー」

 ほろ酔いで、ケラケラとちょっとテンション高めなあたし。

「駄目だ。・・・大和、ウーロン茶」
 
「うっス」

 ヤマトが大っきな声で安子おばちゃんに頼んでる。

「あんたはあたしの母親かってのー」

 ジョッキに伸ばそうとした手を寸前で押さえられて、ぐっと躰が引き寄せられた感覚。

「テメーはこっち飲んどけ」

 力も入んなくなってて、由弦に寄りかかったまま。気が付いたら喉の奥に渋い味の冷たい液体が流れ込んで来る。
 ・・・んー?
 ぼんやりと。
 なんか、柔らかいので口ふさがってるー・・・・・・。

 と思ってたら最後に遠慮なく、舌が口の中を一舐めして出てったから。そこでやっと気付く。

「・・・ちょ、由弦、あんたねぇ・・・っ」

 油断するとこいつはいつも平気で、口移しだのキスだのをやらかしてくれる。
 躰を離そうとジタバタしてもガッツリ抱き込まれて、この馬鹿力ぁ。

「大人しくしねーと、もう一回公開キスかますぞ?」

 人の悪そうな笑いが聴こえて、くそーと思いながらも、されるがままにされてやる。
 洋秋の前でそんな醜態さらせるかっての! ほんとーにムカつく。由弦のそーいう勝手なトコ!