「瑠衣子が俺の義妹で、その従兄妹がヒロか。いっぺんに家族が増えて嬉しい限りだ。これからも宜しくな」 

「こっちこそ宜しくお願いします、お義兄さん」

 あたしがペコリと頭を下げると。

「歳くった気になるから名前で呼べ」

 征一郎さんが困ったように口角を上げた。

 
 ウチの両親やおばあちゃんにも、由弦の身内としてきちんと挨拶し、気さくに談笑して相変わらず好感度が抜群の征一郎さんは。2時間近く留まってくれ、『楽しかった』と上機嫌で秘書の日下さんと帰ってった。
 間際に仕事関係の話だったのか、洋秋達と少し真顔で話し込んでたけど、あたしと鈴奈さんは気にしないフリでお喋りを続けた。
 女(つま)でも踏み込めない領域。それが、極道のセカイ。
  

 
 宴もたけなわ。・・・と言うか。10時を回った頃には、酔い潰れた行き倒れが出始めた。
 役に立ちそーにない連中は車で事務所に送り返すことにして、動ける全員で片付けにかかる。
 余ったお料理は好きなだけパックの容器に詰め込み、お酒も持ち帰り自由にした。若い子は大喜びだった。
 
「鈴奈、お前は無理するな」

 妊娠初期の彼女を心配して洋秋が顔をしかめる。

「このくらい大丈夫だってば」
 
 病気じゃないんだからって呆れる鈴奈さん。

「瑠衣。お前も無理すんなよ、デキてるかもしんねーから」
  
 袖をまくった由弦がビールケースを運びながらしれっと。

「同級生だねー。良かったぁ!」

 満面の笑顔で、聖夜のマリア様があたしを振り返ってる。

 ・・・・・・検査薬、そろそろ買っておこうか。マジメに。