「瑠衣子ー、取りあえず乾杯するわよー? みんなお腹空いちゃうでしょー?」

 鼻をぐずぐず言わせながらすすり泣いてる花嫁に、遠慮のない母。 
 おかげ様で涙も引っ込みましたとも!

「ハイじゃあ、みんなグラス持ってー」

 新郎新婦にもビールのグラスが手渡される。
 
「ハイじゃあ、お父さん音頭取ってー」

 仕切るお母さん。
 お父さんが小さく咳ばらいをしてから、あらたまって声を張った。

「えーお忙しい中、本日集まっていただいた皆さんに感謝と、洋秋夫婦、由弦夫婦の幸せを祝して乾杯!」 
  
『カンパーイッ!!』 

 

 崩れたお化粧をまた直してもらい続いて今度は撮影会。2人でとか4人でとか、家族写真に集合写真。記念だからプロの写真じゃなくたって構わないって。全員一致の意見。

 水上興業全員と親しい付き合いの人だけだし、まさにホームパーティ。今日がクリスマスって要素はほぼ抜けてる。
 最初は特大ケーキも用意しようって話してた。“初めての共同作業”ってやつ。結局、極道男子達はそれほど生クリームが好きじゃないって事実が判明して。どうしてもってワケじゃなかったし省きました。

 遅れて来るっていう征一郎さんにもドレス姿を見せたかったんだけど、だんだん酔っ払いが増えてきたから、汚しちゃう前に鈴奈さんもカジュアルドレスにお色直し。由弦達も普段のスーツに着替えた。



「姉さん、姐さん、ハイ注もーく!!」

 珍しくスーツ着たヤマトが、ステージ前に特設した4段のシャンパンタワーの前に立ち、みんなが周りを囲んだ。
 元ホスト君が手際よくシャンパンの栓を抜くと、小気味いいポンッて音とともに、溢れ出たシャンパン。ビンを傾け上からゆっくり注いでく。
 気を付けて均等にしてかないと崩れちゃうらしく、今までで一番真剣に“仕事”してるんじゃないかと思う。
 
『きれーいっ』

 グラスに満ちては流れ落ちてくシャンパンを目で追いながら、鈴奈さんとはしゃぐ。
 注ぎきったところでドヤ顔するヤマトを二人で褒めちぎった。

「ヤマト君、すっごくカッコよかった!」

「あざっす!」

「ヤマトー。ほんとに真面目に今回はすっごい男前だよ!」

「オレに惚れたくなった?」
 
「うん、惚れそう!」

「・・・瑠衣。テメ、人妻の自覚あんのかよ」

 隣りのダンナ様から低い声と冷凍光線が降ってくる。 
 わざと、んー?ってとぼけて見せれば。いきなり、ぐいって顔を捩じられて噛みつくみたいなキスされた。
 そーやって公衆の面前でお構いなしにすんの、ほんとヤメテ!