卵ちゃんに最後にもう一度メイクを整えてもらい、生演奏用の小さいステージの袖からみんなの前に。
 洋秋と鈴奈さんに続いて、由弦にエスコートされドレスの長い裾を気にしながらゆっくりと。

『組長、若頭、結婚おめでとうございますっ!!』

 クラッカーの音があちこちから鳴り響き、勢いよく祝福の声が降ってくる。
 4人横並びで立つと、デジカメとスマホのフラッシュが一斉に光り弾けて。

「姉さん、マジきれいっス!!」

「ありがと」

 照れながら最前列の端っこから称賛の眼差しを送ってくれてるヤマトに返す。
 
 フレンチスリーブでエンパイアライン、スカートがレースのエレガントなドレスに、長い髪をアップにしてティアラを頭に乗せた、貴族のお姫さまみたいな鈴奈さん。
 ラウンドネックでAラインの、サテンとチュールで涼やかさがあるドレスを選んだあたし。髪が短いから、ネットベールと小花があしらわれたカチューシャで華やかさを足した。
 タキシードもどっちも貸衣装なんだけど、ドレス一式はお母さんが買い取ってあたし達にプレゼントしてくれた。一生モノの大切な記念だって。

「洋秋、鈴ちゃん、由弦君、瑠衣子。本当におめでとう。皆んなが幸せでいてくれれば親として他に何も言うことはない」

 目の前の礼服姿のお父さんが温かい笑顔で。その隣りでお母さんも、小紋を着たおばあちゃんも、何度もハンカチで目頭を押さえてる。

「ありがとうございます」

 洋秋が静かに頭を下げ、倣ってあたし達も。
 残念ながら洋秋のおばさんは欠席の返事で。おばあちゃんとも折り合いが悪くなってたし、だから両方の親代わりのつもりだってうちの両親が胸を張ってた。

 来てもらえないのは承知で由弦の両親にも場所と時間を手紙で送った。無しのつぶてだったけど、お兄さんの征一郎さんが顔を出してくれることになってて、彼を慕ってる洋秋も楽しみにしてるみたいだった。
 
「じゃあ指輪の交換しましょ!」

 お母さんが指輪が二つ収まったアクセサリーケースの一つをお父さんに手渡す。リングボーイとリングガールの代わりを務めてくれるらしい。
 洋秋と由弦は指輪を取り、それぞれの花嫁の指にそっと嵌めた。
 それからあたしと鈴奈さんが花婿の指に。

「兄貴、遠慮しないで誓いのキスいっちゃっていっスよ!」

 ヤマトがすかさず、ツッコんでくる。

「・・・テメェは黙っとけ」

 上から冷気放って凄んで見せるけど由弦の眼は全く本気じゃない。
 何だかんだ言っても仲良し“兄弟”なんだから、この二人。