“ヒマだったら安里でどうすか?”

 ヤマトから、珍しくもないけど久しぶりな飲みの誘いがラインが来てて。
 仕事から帰って家に車を置き、歩きでお店に向かう。
 洋秋と由弦は付き合いで呼ばれてるとかで、いないのは先に聴いてた。今は忘年会シーズンだから“接待”も“営業”も、重要な仕事だもんね。

 
「姉さん。結婚祝いのパーティ、オレにも手伝わせてくれないスか!」

 壁際の小さいテーブルを挟んだ向かいから、勢いよく金髪頭を下げられる。

「組長にも若頭にも世話になりっ放しなんで、なんか役に立ちたいんスよ」

 いつも由弦達を支えてくれてるお礼も兼ねて、ヤマトは招待する側だし。悪いなぁって思いつつ。正直うれしい。
 マンションの賃貸契約だのドレス選びだの、こなさなきゃいけないコトが詰まってるのも確かで。

「ありがとヤマト。真面目に助かるわ」

 申し訳なさげに言えば、水くさいなぁって笑顔が返る。
 この子ってば! あーほんとにカワイイっ。
 
「じゃあ、オレ何すればいい?」

「うーんとねぇ・・・メイク出来るスタイリストさん、誰かいない? ウチのお母さんが探してくれたお店、ジャズバーっていうの? 最近閉めちゃって場所だけ借りるんだけど、控室があるらしいからそこでドレスに着替えたり出来るらしいんだ」

 あたしが言うと少し考えて思い当たったらしい。

「美容師やってるヤツいるから訊いてみる」

 おー。さすが!
 
「あとは料理なんだよねぇ・・・。持ち込みでやるから、おばあちゃんが張り切ってんだけど、お赤飯やら煮物が並ぶのもどーかと思うし。デリバリーじゃ味気ないのかなぁって鈴奈さんと悩んでるんだ」

「そのジャズバーってどこスか?」

「平崎駅の近く」
 
 ココの最寄り駅から3つ先で、そこそこ栄えてる街。

「なら酒と料理もどうにかなるな・・・。姉さん、オレに任せてよ」

 あっさり言い切られて、思わず目を丸くした。
 あれ、こんなに頼もしいコだった?
 あたしの顔を見たヤマトが、チューハイのグラスを空けてから悪戯っぽく笑う。 
 
「見直したでしょー?、オレのコト」

 うんうん。大きく頷く。

「これでも若頭の右腕って言われてるんスからー」 

 誇らしげに言うヤマトがやっぱりカワイく見えた。
 なんて言ったら拗ねるかな? ね、由弦。