座卓の上には肉豆腐やら揚げ出しナスやら、いろいろ並んでて。三人でまずはビールで乾杯。

「瑠衣。ばーちゃんに美味かったって言っとけよ」

「あんたは餡子ダメだけどね」

「・・・殺すぞ」

 低く呻った由弦に構わず、ヤマトに瓶ビールを差し出す。

「ヤマト、ほら飲んで飲んで! 由弦のおごりだからっ」

「うーっす」

 グラスに注いであげると、ヤマトは嬉しそうに一気で飲み干した。
 なんか弟みたいでカワイイ。ウチは一人っ子だったから、洋秋がオニイチャンだったもんなぁ。しみじみ。


 小一時間くらい由弦の高校時代の話なんかで、あたしとヤマトだけ盛り上がって。

「遅くなって悪い」

 チャコールグレーの三つ揃いにワイン色のシャツ、黒のネクタイって堂に入った姿で洋秋がやっと登場した。

「洋秋おそーいっ」

「これでも急いだんだ、瑠衣を待たせてるからな」

 若い衆にはすごく厳しいらしいけど(注:ヤマト調べ)、あたしの前だと、ただの従兄妹で甘くて優しい。
 黒髪をオールバック気味に後ろに流すと、切れ長の目とか通った鼻筋が際立って色気も増すし、あーなんてカッコイイんだろ、あたしの洋秋はっ!
 
 脳内に星と花を振りまきながら、向かいに腰を下ろした洋秋に「なら許すー」とわざと口を尖らせ、大人しくビールを注いであげた。
 
「はいじゃあ、お疲れー!」

 四人でグラスを合わせた。



「昼間、差し入れ持って来てくれたんだってな」

 ぶり大根に箸をつけながら、洋秋があたしに。

「言ってくれりゃ誰か取りに行かせる。お前はあんまり来るな」

「大丈夫だってば。洋秋のとこだし、慣れてるし」

「だとしてもだ。分かるだろ」

 分かってる。心配してくれてることぐらい。けど。・・・会いたいんだもん。
  
 宥めるようにやんわりした眼差しを向ける洋秋に、ちょっとだけ恨みがましい目線を送ると。

「瑠衣は俺が責任持って子守りする。それならいいだろ、ヒロさん」

 隣りからさらっと助け船が。
 由弦のこういうトコ、・・・なんかちょっとムカつく。