豪華に出前の回らないお寿司でみんなで昼食会したあと。午後からは由弦の家に。
あたしもフォーマルぽいワンピースに着替え、それはそれで緊張はしてる。

 由弦のご両親に会うのはいつ以来だろう。
 おばあちゃん家が隣り同士だったせいもあってか、子供の頃から洋秋と由弦がウチに来るのがほとんどだった。由弦の家に上がったコトがあるのも数えられるくらいだったと思う。
 征一郎さんも由弦も敢えて自分から疎遠にしてる風だし、歓迎されないのは腹を括ってる。

 ごく普通のサラリーマン家庭だったのに息子は二人とも極道者。少なくとも。由弦がそうなったのはあたしや洋秋のせいだって。水上の家を良くは思ってないだろう。

 逆に水上家は。亡くなったおじいちゃんが、若い時からそれっぽいカンジで地元に幅を利かせてたらしく。次男の照基おじさんがその地盤を継いで、水上興業を起こした。
 長男のあたしのお父さんは堅気の人生を選んだけど、おばあちゃんが、ヤクザだろうと何だろうと家族は何があっても助け合えって。おかげで絶縁も疎遠もなく、家族の絆は深い。 
 珍しいことなのかも知れないけどあたしは自慢に思うし、ご近所にだって何の引け目も感じてないんだ。
 


「由弦」

 向かってる車の中であたしは先回りして言った。

「おじさん達が水上のコトを悪く言っても、キレないでよ?」

「・・・・・・・・・・・・」

 こっちを一瞥した運転席の由弦は肯定も否定もしない。・・・釘刺しといて正解かも。あらたまって念を押しとく。

「あんた、自分は何言われても平気でも、あたしや洋秋のコトはダメでしょ。・・・分かってて行くんだから冷静でいなさいよ?」

 すると由弦は大きく息を逃して「・・・敵わねぇよな」と呟いた。

「瑠衣の前で、みっともないマネ晒す気はねーけどな」 
 
「結婚さえ許してもらえれば、あたしはいいの。どう思われてても」
 
 薄く笑んで返した。
 
 
 強がりでも意地でもない。
 真下由弦を一人の人間として、男として。
 ココロから愛してるって。

 由弦を生んでくれた人達にひと言伝えに行くだけだから。