北から吹く風が穏やかとは言い難いけど、それなりに快晴。
 せっかくだし他にも寄り道して帰るかを、高速をぶっ飛ばし中の運転手に訊ねてみる。

「・・・取りあえず帰って、それからヒロさん家にみやげ持ってくか」

「じゃあラインしとく」

 そう言えば。洋秋から返信が来てたのを思い出す。

 “楽しんでこい”

 由弦と一緒にいるのは楽しいっていうより。『らく』・・・かな。
 何の気兼ねも要らないし気心知れてるし。だいたいのコトは、お互い分かってるもんねぇ。
 そっと由弦の横顔を窺い見る。

 洋秋にフられた時から,由弦しかいなかったんだろうけどね。あたしには多分。
 望みがない片恋を抱えたまま、生きてくつもりだって無かった。
 由弦じゃない別の誰かを好きになったって良かった。
 それをしなかったのがね、・・・もう答えだったんだよ。

 無駄に背負ってた肩の荷物をやっと一つ降ろして、自分にやれやれって気持ちと。
 なんでこんなに清々しいのかってぐらい晴れやかな気持ちと。
 由弦を待たせた分、あたしがこれから埋め合わせしてくから。胸の中で笑む。まだちょっと照れくさくて、本人には言えない。

「・・・どうした」

 何も言ってないのに由弦が横目で。
 相変わらず、あたしの気配には敏感だ。

「んー? なんでもない」

 笑い返して洋秋へのラインを書き込む。

 “夜、由弦とお土産もってくね”

 すぐ既読になって、間もなく返信が。

 “赤飯用意して待っててやる” 


 洋秋までナンの祝いよ、それーっ!