「そう言えば姉さん、仕事休みっスか?」

 今ごろ気付くとは。クスリとして。

「今日と明日で連休」

「えーじゃあ、あとで飲みに行きましょーよ!」

「ヤマトのおごり?」

「もち、若頭っス」

「いいねー」 
  
 洋秋の事務所から一本奥に路地を入っただけで、下町情緒あふれる家並みになる。道も狭くて、一軒が火事になったら壊滅ってぐらい。
 ウチの隣り近所も顔触れがどんどん変わっていって、昔から住んでるお宅も減ってきた。
 洋秋の実家は2ブロック先で、今はおばさんが一人で暮らしてる。時々顔を合わせるけど、おじさんが亡くなってからちょっと老けた。

「ヤマト、この辺で大丈夫。まだ明るいし」

 夜の7時に“安里”(あんり)でまた顔を突き合わせることにして、送ってもらったお礼を言う。

 肩を揺らしながら大股で帰ってく背中を見送り、洋秋も安里に来るかなぁ、とぼんやり思った。・・・・・・会いたいな。胸がきゅっとする。

 分かってても。会いたいよ、洋秋・・・・・・。

 暮れ始めた空を見上げてそっと。溜め息を吐いた。